群馬県桐生市のNPO法人北関東産官学研究会は、北関東でさまざまな産官学連携事業を展開しています

特定非営利活動法人北関東産官学研究会
〒376-0024
群馬県桐生市織姫町2番5号
公益財団法人桐生地域地場産業振興センター4階
TEL.0277-46-1060
FAX.0277-46-1062
北関東地域で、社会の変化に適合した、あるいは時代を先導する産業をつくり、将来に向けてさらなる発展を目指すには、その背景に豊富な科学的知識をもち、人材を供給する大学と産業界との間に、緊密な交流の場があることが欠かせません。大学もまたこれによって共に成長します。このような考えに基づいて、様々な産官学三者の連携事業を展開しています。
053338
 

北関東地中熱利用研究会

 

夏は熱く冬は寒い北関東

夏は熱く冬は寒い北関東
 
群馬県内の最高気温と最低気温
群馬県内の最高気温と最低気温
 群馬県の中毛から東毛区域(前橋・桐生・館林)における夏の日最高気温は30.4~31.4℃(平年値)で、東京(30.8℃)とほぼ同じです。ちなみに前橋の、2003-2012 年の夏の
日最高気温は31.9℃(8 月)で、群馬県の最近の猛暑振りが顕著に出現しています。
 しかも、2010~2012年の熱中症救急搬送人員で群馬県は全国3位(人口10万人当たり54.67人)、神奈川(26.64人)や東京(28.65人)と比較し猛暑環境が伺われます。
 一方、同区域における冬の日最低気温は-1.5~-0.7℃で、東京(2.1℃)より3~4℃も寒いのです。
 省エネ法による暖房需要を示す地域区分で、東京がⅣb(暖房度日が1,500 以上2,000 度日未満)であるのに対して、前橋はⅣa(暖房度日が2,000 以上2,500 度日未満)です。群馬県内の暖房需要は首都圏と比較して大きく、北毛区域(Ⅱ~Ⅲ)の暖房度日はさらに2,500 以上です。
 

敷地面積が広い北関東

敷地面積が広い北関東
 
北関東圏の持ち家住宅敷地面積は、群馬県130.74㎡(都道府県別23 位)、栃木県131.92 ㎡(22位)、茨城県129.76 ㎡(24 位)です。一方、南関東圏の東京90.76 ㎡(47 位)、神奈川県 98.26㎡(46 位)、埼玉県105.99 ㎡(43 位)、千葉県110.07 ㎡(40 位)です。
住宅敷地面積が広い北関東圏では新築住宅はもとより、既設家屋のリフォームでも地中熱利用の冷暖房システムの施工は比較的容易です。戸建て住宅の場合は大掛かりな工事や設備を要しないため、着工
から完成まで概ね一ヶ月で快適な生活環境を得ることができます。
計画地の面積・地盤(地質)・地下水(量・水質)と予算や地域の条例・規則等に応じて、クローズドループ(垂直埋設型・水平埋設型)とオープンループ(還元方式・放流方式)で、適正な地中熱利用ヒー
トポンプシステムの選定・施工が可能です。
 

役に立つ「群馬県(平野部)地盤情報」

役に立つ「群馬県(平野部)地盤情報」
 
群馬県(平野部)地盤情報
群馬県(平野部)地盤情報
 群馬県庁HPマッピングぐんま(http://mappinggunma.pref.gunma.jp/pref-gunma/top/)の「自然・環境情報」には、地中熱を利用する場合、地盤の熱物性と地下水に関する情報がたいへん役立ちます。
 掲載している主要なデータは、地層区分、地下水位、有効熱伝導率、ボーリング深度です。地中熱利用に係る専門的知識をベースにこれらのデータが活用されることにより、設計、施工のリスクが大きく軽減できます。
 地盤情報をご覧になれる地域は8地域ですが、この地区以外の北関東圏でも計画地の地盤(地質)や地下水の特性に応じて、効率的な地中熱の利用は可能です。
 本情報の利用や地中熱利用システムを導入する場合は、群馬県環境森林部環境エネルギー課(Tel:027-898-2456、kaneneka@pref.gunma.lg.jp)、および北関東地中熱利用研究会(NPO 法人北関東産官学研究会専門部会)の専門的技術を有する会員会社等にご相談ください。
 

1.地中熱交換器の方式

1.地中熱交換器の方式
 
 大地と熱を交換する方法は数種類あり、最も普及しているものは熱を温度の低い所から高い所に移動させる機械であるヒートポンプを利用した冷暖房・給湯システムです。家庭のエアコンや冷蔵庫もこの技術を用いて空気との間で熱をやりとりしており、地中熱利用ヒートポンプとは地中との間で熱交換を行う点で異なっていますが、技術的には同じものとなります。
 地中熱利用ヒートポンプシステムには、地中にパイプをループ状に挿入しその中で不凍液等を循環させる
クローズドループ方式と、地下水の熱を直接利用するオープンループ方式があります。
 一般に利用されているクローズドループ方式は、「Uチューブ」と呼ばれるU字型の採放熱パイプを地中に挿入し、中に水や不凍液を満たして循環させ熱交換を行います。また、地中に銅パイプを挿入して、直接、冷媒と熱交換することで熱交換効率を高めた「直膨式」があります。オープンループ方式に比べて熱交換の効率は低いものの、地下水を揚水しないため、揚水規制のある地域でも導入可能です。
 一方、オープンループ方式は熱交換する循環水に地下水を利用するもので、水質によっては追加設備が必要となるほかメンテナンスの問題や揚水規制による制約などもありますが、比熱の高い地下水が熱を運ぶため熱交換能力は高く効率的です。
概要は下表のとおりです。
   
クローズドループ方式 オープンループ方式
地中熱交換器コスト 高い(ボーリング費用が初期コストの1/2~1/3) 低い(初期費用対効果では、クローズドループ方式の1/5~1/10)
施工場所 全国どこでも可能。 地下水豊富な扇状地・火山山麓・平野・盆地などに適している。
冷暖房面積 地中熱交換器数は多く、施工面積に比例する。 地下水揚水孔の施工数は少なくて済む。
条例・通達規制 考慮不要 自治体の地下水規制や放流条件に留意。
地下水水質 考慮不要 水質により地表熱交換器を要する。
補助金対象 経産省
環境省 推奨
群馬県
メンテナンス ほぼメンテナンスフリー
(機械はメーカーによる)
地下水によって目詰まり・配管障害などに留意。(定期点検が必要)
 

2.二方式の費用対効果

2.二方式の費用対効果
 
ヒートポンプ出力あたりのイニシャルコスト事例
ヒートポンプ出力あたりのイニシャルコスト事例
 地中熱利用ヒートポンプの出力規模とイニシャルコストについて比較した場合、クローズドループ方式で出力kW あたり概ね25~60 万円程度、オープンループ方式で出力kW あたり概ね10~30 万円程度となっています(環境省資料、2012)。
 また、同資料によると、同じ敷地内で施工した東京大学「理想の教育棟」(2011 年)による熱交換器採放熱量について両方式の差異が得られており、クローズドループ方式(Uチューブ、100m×10 本)の採放熱量50kW に対して、オープンループ方式(交互揚水還元井戸、20m×4 本)の採放熱量は70kW となっています。
 

3.中大型施設への導入

3.中大型施設への導入
 
① クローズドループシステム(ボアホール施工・基礎杭利用)都内のオフィスビル(1~3 階のオフィスフロア床面積計300㎡)における、空気熱と地中熱の電力消費量を比較すると、地中熱利用後の年間電力消費量が半減しています。
地中熱は、夏の電力不足対策と熱中症対策、冬の暖房需要、地球温暖化防止(CO2削減)にとって一石四鳥です。
② オープンループシステム(揚水孔利用の還元方式)例えば、群馬県吉岡町による地中熱利用可能調査業務で施工した試験孔(採放熱量50kW)と、新たな揚水孔(φ200mm×70m、採放熱100kW)を1孔削孔し、2 孔同時にオープンループ方式(還元方式)で利用した場合、文化センター学習棟の1階(図書館、児童学習室、事務室)と2階の研修室と工芸学習室の冷暖房を地中熱利用に切り換えることが可能となりました。
また、このケースでは文化センター学習棟の使用電気
料の30~37.5%(3/8)程度が削減できる計算となり
ます。
 

4.一般住宅等・小規模施設への導入

4.一般住宅等・小規模施設への導入
 
①オープンループ方式
 浅部地下水を利用するためには、新たに10m 程度の井戸を建柱車等でボーリングをする必要があります。例えば、オープンループ方式で毎分14L の浅部地下水を汲み上げた場合、熱交換温度差5℃により5kW の採放熱量が確保できる計算となり、26 ㎡(16 畳)程度の広さの部屋を対象としたイニシャルコストを抑えた冷暖房システムの導入が可能となります。
 ただし、必ずしも10m 程度の井戸で浅部地下水を揚水できる地域ばかりではないことも考えられるため、実際の導入に際しては注意が必要です。
 中深部地下水を利用するためには、30m~70m程度の井戸を新規に削孔する必要があります。ボーリング作業に伴う施工費が必要となり、その上でオープンループ方式とクローズドループ方式のどちらを採用するかの選択が必要ですが、イニシャルコストを考えた場合オープンループ方式の採用が現実的です。
 オープンループ方式の場合、仮に50mの採熱孔により50kW 程度の採放熱量が確保されたとすると、1 孔あたりの地中熱利用冷暖房の対象面積は約260 ㎡(約160 畳)となります。標準的な1 世帯あたりの住宅面積からすると、1 本の採熱孔から2世帯の冷暖房システムに必要な熱量が賄える計算です。
 このことから、比較的イニシャルコストが高いといわれる地中熱空調システムも、揚水井を含む熱交換器を数戸で分担施工することにより1 世帯あたりの単価を抑えることが可能となります。共同地中熱空調システムは地下水が豊富な、地形や地下水の自然特性を活かす取り組みとしては十分検討するに値すると考えられます。
   
②既設井戸利用地中熱システム
 年間水位が3m程度と安定して揚水できる既設井戸がある場合は、浅部地下水の地中熱を利用するクローズドループ方式導入の可能性があります。この場合、井戸水の中に不凍液を満たしたチューブを循環させるシステムが有効であり、地中熱普及の最大ネックである地中熱交換器の設置と新たな揚水井の施工が必要ありませんので、事業費の削減が可能となります。
 すでに玉村町再生可能エネルギー研究会では、既設井戸に熱交換器を挿入し地中熱ヒートポンプシステム(暖房5kW/冷房4kW)による事務所(22.5 ㎡、約14 畳)の冷暖房の実証実験も行っています。
 
③直膨式システム
地下水-冷媒熱交換器を組合わせて、既設井戸利用を可能にする方式も考えられます。井戸水を汲み上げて熱交換させることで、地中に新たに採熱抗を設ける必要がないため、初期投資を抑えたシステムの導入が可能となります。
 

5.農業用施設への導入

5.農業用施設への導入
 
 農業用ハウスの暖房は石油やガスの利用が一般的ですが、輸入燃料コストの上昇やCO2 の排出が焦眉の課題となっています。地中熱は灯油を燃料とする方式に比べ、ランニングコストを大幅に削減でき、またCO2の排出量も削減できることから農業用施設への導入も有効であると考えられます。
 たとえば、山梨県でトマト栽培に利用しているケースでは、それまで冬期や夜間に灯油を使用して農業用ハウス内を暖めていましたが、これを地中熱利用ヒートポンプシステムに切り替えたところ、従来の農 業用ハウスで利用する灯油による加温方式と比較して、ランニングコストが40%以上減少、 CO2 の発生 量は60%削減されたことが確認されました。
 この施設では、地下100m程度まで掘削したボアホールに地中熱交換器を設置し、ヒートポンプでつくり出した熱を温風で送ると同時に地中に温水を循環させるパイプを埋設してハウス内の地中暖房もおこなっています。
 

北関東圏で見学できる各種の地中熱利用システム

北関東圏で見学できる各種の地中熱利用システム
 
こちらよりダウンロードのうえご参照ください。
各種地中熱利用システム ( 2016-08-22 ・ 360KB )
 

地中熱利用System にかかわるご相談は研究会の会員に

地中熱利用System にかかわるご相談は研究会の会員に
 
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