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去る9月24日の日本経済新聞に非常に刺激的な記事が掲載された。人口10万人以上の市について、2030年までの人口減少率が大きい都市として群馬県桐生市が6位に挙げられている。また、人口減少に伴う消滅可能性都市として群馬県南牧村が1位、同県神流町が6位に載せられている。10位までの表には残りの北関東3県で挙げられている市町村はない。
これらの情報を基にして考えた対応方策を述べてみたい。経済財政諮問委員会の「選択する未来」委員会で英知を集めて議論が行われている最中であり、全国を視野に入れて正鵠を射る解決法を見出すことはなかなか難しい問題である。敢えて話題にするのは、足元からあるいは限定された地域からなら解決の実現可能性を探ることができるのではないかと考えるからである。
桐生市を例として調べてみる。2030年までには93,002人にまで人口が減少するとの予測である。本年8月末の総人口が市の統計によると118,977人であるから、減少率は21.8%であり、新聞紙上の19%とはやや異なる。しかし、大幅な人口減少であることには変わりなく、市勢の衰退は想像を越えるものがある。国勢調査に基づくコーホート図を描いてみると、2010年に25~29歳になった人口が2005年に20~24歳であった人口より1,299人減少しており、そのほとんどは市外への移動であると考えられる。結婚・出産適齢期である20~34歳の2010年の人口は2005年の15~29歳の人口より2,332人減少してお 人口減少に対する一方策 NPO法人北関東産官学研究会 会長 根津紀久雄 り、他の年代より圧倒的に大きい数字である。このように若い年代層が市外に流出する結果として、子供たちの誕生も抑えられ、人口動態は負のスパイラルに陥ることになる。
対策として、市内への移住者向け空き住宅の活用、移住者の新築補助、医療費や学費などの子育て支援等々、様々な取組みが行われているが、これらと連動してより効果を発揮させるために定職による定住を考えてみたい。若い世代に対して、貧富の格差拡大の原因になっているフリーター、ノマド、単純な派遣社員などの非正規雇用を減少させるために、勤務地、職務および労働時間を限定した新しいタイプの正社員制度(ある意味ではジョブ型採用)を導入する。処遇に関してはワークライフバランスを十分に考慮して決定する必要がある。これによって若い年代層が家庭を持ち、安心して子育てができる社会を地域に創りだす試みの提案である。
そのために、行政および経済団体が連携して協議会を結成して条例を定める。その中では、個々の企業にとって最初はリスクあるいは負担と受け取られかねないので、企業の社会的責任の一つとして位置付けておき、各企業の理解を深める努力をして地域ぐるみの運動として浸透させていく。効果が現れるには息の長い行動が求められるだろうが、「今ここにある危機」と考えて取組みを開始するのでなければ、負のスパイラルに陥り、将来により大きな禍根を残すことになることを恐れる。